蜘蛛の巣の写真集

ハレの日のケ、ケの日のハレ

白と黒(フリーペーパー“そのヒグラシ”第4号 特集・嘘つき)

 見抜こうとする。そのままを言葉にしようと思う。でも例えば気を遣う。この人は打たれ弱いからとか、そこまで親しくないからとか、ほんの少しの嘘で包む。あるいはハナから見え方に嘘がある。この人には白くあってほしいとか、信じるために。諦めるために黒を多めに見積もるとか。純白を漆黒と言うことはなくても、白に滲む黒を見ないふりすることはある。嘘は重なって濃くなって、それが善か悪かもう分からない。
 いつでも良いよ気にしないでとか、楽しかったよとか、また会いたいよとか。
 約40年生きて、自分が見えているものが他の人の見えているものとは違うと分かっている。今のこの場所からこの視力で見えるものは貴方の場所から貴方に見えるものとは違う。でもそれを知らないことにして、私には白く見えるそれの裏側が黒いかもしれないことにはわざと触れない。
 子供の頃好きだったクイズ番組のトロフィーを思い出していた。なるほど!ザ・ワールドの、角度によって“?”と“!”に見える不思議なトロフィー……ではなくて、クイズ面白ゼミナールの、角度によって“?”と“逆さまの?)に見える不思議なトロフィー。ああそうだ、記憶も嘘をつくのだった。
 すごく好きだったよとか、私は精一杯やったとか、幸せだったとか、傷付けられたとか。自分にも分からない嘘を支えに生きている。